
神経痛で脚がズキズキ痛い。ついでに腰までギクシャクしてきた。
……というのも、原因はハッキリしている。
母が長年使っていた二部屋を、思い切ってリフォームすることにしたからだ。
押し入れを取っ払って、一部屋につなげて、私と母が同室に——というプラン。
いよいよ「介護生活本番」の舞台が整うわけだが、どうやら主役のひとりは乗り気じゃないらしい。
ケアマネさんが「娘さんと同じ部屋になるんですね〜」と声をかけたときの母の反応がこれまた見事だったそうで。
「ひぃえぇ〜〜〜」と叫び、ベッドの上でのけぞったんだとか。
可愛くないったらありゃしない。
ケアマネさんはその姿に大笑いしていたけれど、残念ながら私にはそんなお茶目な一面、見せたことがないよ。
そんな母を、ようやく見つけた郊外の短期OKの入所施設に送り出し、いざ片づけ開始。
…したのはいいけれど、これがまた予想以上の重労働となった。
「たった二部屋でしょ?」と、ナメてかかった自分をひたすら後悔。
押し入れの奥からは、いにしえの遺物がざくざく登場。
中でも、中学時代の私の体操服が出てきた瞬間には、思わず「出たな、レジェンド!」と握りしめてしまった。
さらに、もう二度と袖を通すことのない着物の山。
でもね、見た瞬間に思い出してしまったのですよ。
「ああ、この着物、冬になるとよく母が着てたなぁ」って。
きびきび働いて、声をあげて笑ってた、若い頃の母の姿。
無口でぼうーとしてた子どもの頃の私に、あれやこれやと話しかけてくれた声まで、鮮やかに蘇ってきて——
気づいたら、目頭が熱くなっていた。
……なんだこれ、遺品整理みたいじゃないか。いやいや、まだ生きてるし、元気だし。
だけど、片づけても片づけても物は減らず、むしろどんどん出てくる始末。
まるで“食べても食べても減らないチャンポン”状態。
気づけばゴミ袋が二十袋近く。
「いや待って、もしかして必要なものも捨てたんじゃ…?」と冷や汗をかきながら中身をチェックしたけど、やっぱり“ゴミ袋にふさわしいものたち”しか入ってなかった。たぶん。
それにしても、物のない時代を生きてきた人の「容器愛」は深い。空き瓶、空き缶、空き箱、ビニール袋に紙袋……備品のオールスター大集合。保存しすぎです、お母さん。
脚と腰の痛みにうめきながら、ふと考える。
今ごろ、知らない土地の、知らない人ばかりの施設で、母は何を思ってるんだろう。
緊張してないかな。夜、眠れてるかな。寂しがってないかな。
工期は決まってるし、今さら止められないのに、気持ちはどんどん焦っていく。
でもね、最初に「しばらく母がいない間、のびのびするんだー」なんて思った私だったんだけどね。
我慢できないのは、もしかして母じゃなくて——私の方かもしれないね。