愛犬と海と日常

貧乏性を抜け出して優雅に時間を使えないものか

月に一度の母の受診

あっという間に4週間が過ぎる。

薬が切れかかってから気が付き、慌てて母を病院に連れていくのが毎月のこと。

 

病院行くよー、と言う私に「あーそー」のんきな返事の割には、私がバタバタ出かける準備の途中部屋をのぞくと、いつの間にか着替えをすませ、ポーチまで肩から掛けてテレビを見ている。

 

最近の着衣は、柄物に柄物を合わせたり、季節がずれているものを着たりするが、特に支障がない限り本人の着たいものを着ればよいと思っていて、そのままどこでも連れていくことにしている。

 

正反対の性格だった生前の父のことをふと思い出した。能天気でケセラセラの母と、どこまでも深く追求し、場合によっては立ち上がれないほど自分を追い詰める父だったから、若い時はお互いの未知の部分が魅力に見えたのかもしれない。
長い人生では気持ちが添うことは無かったようだ。それでも私が居るためにだけ、二人は最後まで添い遂げたのだった。

 

振り返れば、思いつきで「〇〇行こうか」と誘うと、二つ返事ですぐに一緒に出掛けられた母と違い、父の場合は何時間も準備の時間を要した。
急に誘おうものなら怒り出す始末。気分が乗らないと、当日でも出かけるのを辞めるなど難しい父だった。
今でいう「繊細さん」だったかもしれない。気持ちを整えるのに大変だったのだろう。

 

先日、母の日に渡した綿ローンのパープルのブラウスを着て、すましている母を見るとそんな昔を思い出してしまった。
ただ、「ほら、着たよ」など、昔の彼女ならすぐにそう言って見せに来たに違いないのだが、プレゼントされたことも、いつからタンスに入っているのかも、おそらくすでに忘れており、もう昔の母ではないのだなあとつくづく思う。

いつもの先生にいつもの質問。同じ訴えが繰り返される母のルーチン。
医師も同じ笑顔で同じ返事をして無事診療が終わるのだが。

「毎日、仏壇のお父さんに早く迎えに来て~って頼むんですよオ」ほら、始まった。

「でも、あんまり頼んだらかえって迎えに来てくれないそうですねエ」といつものセリフの後、今回は先生が新手のジョークに出た。

 

「じゃあ、ご主人じゃなく別の人に頼んだらいいですよオ」おい、おい!

せんせーい、今なに言うたーー!!

小気味の良い先生の本気ともつかない冗談に、思わず一同大笑い。

 

へえ~~、いつも真面目一辺倒だと思っていた先生がねえ~。
よく考えたら、結構とんでもない内容なのだが、全員ツボにはまって笑ってしまった。

当の本人は、よく分からんけどみんなが笑っているからなんか楽しい、って感じかな。

なんだか気分爽快になって。

帰り道、久しぶりに母とコンビニに寄って帰った。