愛犬と海と日常

貧乏性を抜け出して優雅に時間を使えないものか

消えたカートと倉庫の謎:奇妙な出来事

このところは急に寒くなったのもあって、自宅から出ない日が多く、ごく限られた範囲内の日常生活をおくっている。

わたしは取り立ててそれで不自由を感じない。良いのか悪いのか・・

 

最近、脚の付け根の外側に痛みを感じるようになり、歩き始めに困難を覚えるようになった。どうやら同じ姿勢を続けているとそうなるようで、明らかな運動不足によるものらしい。わかってはいるものの快適空間から抜け出す勇気はいまのところない。

 

先住犬の遺骨は、いつも朝に晩にご飯を食べていた台の上にあり、今までどおりご飯を供え、そのあとフウタが食べている。

母は朝に晩に(時々忘れるが)座り込んで亡き犬とお話をする。

 

当初は元気だった犬に思いがはしり、その光景を見るのが辛かったが、それなりに慣れていくものだ。忘れてはいないけれど、記憶って角が取れて痛くなくなっていく。だから生きていけるのだろうが。

 

母は毎回「ご飯食べたね~?」「元気に走ってるね~?」「お父さんも花ちゃんもいるでしょう?一緒に遊んでもらってる?」その他、モゴモゴ・・

プッと吹いてしまう時がある。

 

4週間分の母の薬がなくなるギリギリまで受診に連れて行かない。

もっとも本人は覚えてもいない。

仕方なく重い腰を上げて、母を年末最後の定期受診に連れていく。

いつもと同じ流れでほぼ同じ会話を繰り返す状況を笑顔で忍耐する。

「今日が年内最後だから、先生にご挨拶よ」というと振り向いて丁寧にソツなく挨拶をした。ム、ムー認知症おそるべし。

 

今日は少し調子が良いのか受け付けの支払いに、提示された金額を小銭まできちんと合わせて出した。母はこれまで見ていて、夏より冬場のほうが頭の中がクリアのようだ。

 

帰宅時、車に乗せたとたんに「今日は買い物したいのよね」

ほら始まった!「お母さん、いっつもそうなのよね。どうして前もって言わないの。いま今言われても私も予定があるのよ!」つい、口調が強くなる。

 

以前のようにデパートなどに行って、下着や衣服を見て買いたいのだ。わかってはいるが、店内を見て歩くにはリスクと負担が大きすぎた。どこに行くにもまず、エレベーターがあるかどうかを確認し車椅子の手配をしなければならない。ついては車いすを人混みの中で押して歩く体力が私にはもうない。それ以前に母は車いすを絶対拒否る。

というより、難聴の母を連れて・・考えるだけでおっくうすぎてしたくない。

 

杖歩行の母は、以前散歩に出て途中で座り込んだことがある。あまりに帰宅が遅いので迎えに行ったときのことで、すでに道に迷っていた。そんなことをなんどか繰り返し、母はもう一人では外へでなくなった。が、今でも「なーんの、どこでも歩けるよう」と言う。

 

車の中で「ああ、そお~」と肩を落とす母が少しだけかわいそうに見えて、「欲しいものは紙に書いといて。時間ある時に買ってくるから」「うん・・」

来年の暦や脳トレの雑誌や、おやつも買いたいのだろうと気を取り直し、帰り道のドラッグストアに寄った。

 

「ゆっくりね!」「お菓子、山のように買わないのよ!」と言う私をしり目に、カートを押してさっさと店内に向かう母は最たる難聴だもの、私の言うことなんざ聞いちゃいない。

店内に移動した母は、ひとコーナーごと珍しそうに見ながら奥へ奥へ歩いていく。ついて歩くのも苛立ちそうなので、対面から母の動きをチェックする。突き当りの通路を右へ行ったり左へ行ったり、私は反対側から同じように移動し、母の姿を追う。

 

すると、突然母が視界から消えた。えっ?!

私、今目閉じなかったよね。いない!!

あわてて突き当りの通路まで移動すると、ちょうどコーナーの陰に「WC」の案内があった。あー、やれやれ。トイレに行ったのね。

あれ?でも、たしか中にお菓子が入ったカートはどうしたの?

 

どこを見ても通路に母が押していたカートがない。一瞬かみかくしにあったような不穏な感覚を覚え、あわてて案内板のドアを入るとそこは、スタッフ事務所と倉庫になっていた。反対側にトイレの入り口があった。通路のどこにもカートはない。

は、はーん。まさかだが、きっとトイレ内までカートを持ち込んだに違いない。

 

『もう、店員さんが見たらどうよ、万引き犯とまちがわれるじゃない』

『トイレに行くならなんで私を呼ばない!?何度も向こうから顔見てたくせに』

など、だんだん腹が立ってきていた。とりあえず、店内まで戻って待つ。

同じ場所で、穏やかならぬ顔で立っている客を、店員さんが怪訝そうに見ていく。

 

かなりの時間を待つが全く出てくる気配がない。さすがに心配になってきた。

落ち着かない素振りで、ウロウロしてしまう私を、店員さんがなおさら見る、ような気がする。さすがにおかしい。

バン!と案内板のドアを開け、トイレの方向へ急ぐとドアは開け放されており、トイレの中は空っぽで誰もいない、もちろんカートもない。

 

胸騒ぎを抑えきれず、踵を返して振り向くと、その先にある店内倉庫の荷物や箱にまみれて、だれかがカートを押して歩いている!!??

一瞬状況がつかめなかった。母が店内と間違えて倉庫の中をねりあるいているではないか!ギョエー

さもあらん、認知症あっぱれ。腹が立つやらおかしいやら、思わず写メにとろうかと思ったが、店員さんが通る前に早く元の位置へ戻さねばと、我に返った。

 

あとはもうたぶん怒りの極致だったような気がする。

こういう時にやさしくなれないのだよねえ。「こっちでしょー!」なんて怒鳴って、母が、きょとんとしながら杖を突きつき、ついてくる気配を感じながら、あとは自分だけずんずんカートを押してレジへ向かった気がする。

もう、わかりきっているはずなのに、十分予測できることなのに、母の言動にいちいち動揺してしまう自分に腹がたってしょうがない。無性に腹が立って仕方ない。

(※ちなみにタイトルはAIさんが作ってくれたものです。へえ~、と感心しました。)